金沢駅から東京駅まで歩いた話 2日目 (2)~オロロの猛威~
2015年 8月 2日(日)
山越えだ!
と意気込んだわりに、大量のアブにビビッてしばらくもじもじしていたが、心が決まったので再出発。
顔はタオルと帽子で覆い隠し、手首から先だけ露出した状態で歩き続ける。
手は常にぶらぶらと振り続け、アブが止まらないように抵抗する。
残りの部分は安全かと思えば、普通に布の上からでも噛んでくる…
噛まれる痛さには慣れてくるので大丈夫だったが、大群に囲まれていることと、耳元でブンブンブンブン飛び回る音が精神的にとてもキツい。
意識を維持しようと、常に
「ひゃーあーやべーひゃーはーどっかいけーどっかいけーひゃー」
などと、裏声で奇声をあげながら歩いた。
イメージしづらいと思うので、よくテレビで見るようなハチの大群を思い出してみてください。
あのレベルの大群のアブに囲まれています。
どれだけ振り払おうとも逃げません。
そりゃ発狂します。
時折、「あーーーまじどっかいけや!!!!」
とブチギレながら進んで行く。
しばらく気狂いモードで歩いていると、後ろから車が二台追い抜いて行った。
もちろん車にもアブがまとわりついている。
なので窓は開けられない。
なのにしっかりと聞こえた。
「きゃーーー!!」
という悲鳴を。
窓を閉め切っているのに、外に漏れるほどの悲鳴。
追い抜いて行った二台ともから聞こえた。
おそらく僕を見て叫んだのだろう。
おさらいします。
- 頭は帽子とタオルで覆っている
- 七部丈のTシャツに長ズボン、スニーカー
- 大きなバックパックを背負い
- 小刻みに手や頭を振りながら
- 大量の虫に囲まれて歩いている
普通に、普通に考えてヤバいやつだ。そりゃ叫ぶ。
わかってはいるけど、僕は少しだけ寂しかった。
助けてもらえる状況ではないけれど、精神的にかなりのダメージをくらっていたから、怖がられて去って行かれて寂しかった。
こうして精神的追い打ちをかけられながら(自業自得)、休み休み歩いていく。
もちろん水分補給中も囲まれている。
多少、量は増減するものの、アブは一向にいなくならない。
発狂する元気もなくなってきた。
小声でぼそぼそつぶやきながら、ゾンビのようにのろのろ進んでいく。
3時間ほど歩いただろうか、ようやくアブがいなくなった。
そこからしばらく行くと
やっと集落が見えた!!
喜びと、とてつもなく安堵した。
集落に入ってすぐ、そこに住むおばあちゃんに出会った。
事情を説明すると、こんな時代に修行のような辛いことをして偉いね、と。
修行のつもりはなかったが、修行っぽくなってしまった。二日目にして。
そしてアブについても教えてくれた。
あいつらはこの地域では『オロロ』と呼ばれているらしく、綺麗な川の近くに大量発生するそう。
後々調べたら、噛まれると血が出て激しいかゆみに襲われる。
と書いてあった。
相当噛まれたけどかゆみはなかった。噛まれすぎてマヒしたのかな…
おばあちゃんは僕を心配して、水分たっぷりの極太きゅうりをくれた。
おばあちゃんの優しさに元気が抜群に回復した。
もう少し歩くと福光温泉があるから、そこで先の道のことを聞いたらいいよ。
と教えてもらい、おばあちゃんに感謝を伝え集落をあとに。
後日談…
旅を終えてから数年後。
音楽の趣味を通して一人の富山出身の方と出会うが、
なんとこのおばあちゃんの親戚だった!!
僕のInstagramを見返して気づいたらしい。
運命ってあるのかもしれない…
1,2km歩いた所に福光温泉を発見。
しかしまだ営業時間前のようだ…
つづく
ここまで約27.5km
Kimmy
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